Ichthus School of English イクサス通訳スクール

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Lesson 2

 

 

今回は、実際にレッスンで使った練習問題をつけます。

 

さて、現在、企業内通訳者として働いている方たちの教育背景はさまざまです。最近では、イギリスやオーストラリアの大学・大学院で通訳課程を修了している人も珍しくありません。

 

企業通訳者として働くことを選択する主要な理由は、やはり経済的な安定ではないかと思います。たとえ期限付き契約で働くとしても、フリーランスとして働くよりは契約期間内では収入の安定が保障されるからです。また、東京在住と地方在住の人たちでは通訳の需要そのものに大きな差があります。

 

私は、昔イギリスの大学でも教えていたことがあります。その時、イギリスの大学に学びにきていたEU圏出身の学生たちはほぼ全員、英語は堪能でしたし、英語以外にもかなり流暢に話せる言語を持っている学生たちは大勢いました。

 

そういうEU圏出身の学生たちの中には、大学で会議通訳の修士号を取得して、EUの諸機関で a staff interperter (専属の通訳者) として働くことを希望していた学生たちが少なからずいました。

 

EU加盟国の間では頻繁に国際会議が行なわれていますので、通訳の需要は、日本とは比較にならないくらい膨大です。それだけに競争率は高く、通訳者になるには大変ハイレベルな技能と語学以外のいろいろな教養が求められます。

 

EU 加盟国会議と通訳者ブース

 

 

これはあくまでも一般論ですが、日本の場合、少し英語が堪能であれば比較的容易に企業通訳者になれてしまうケースが多いのです。

 

極端な話、通訳をするようになってから必要な技能を身につけるという事態も生じています。とにかく英語が上手に話せるということが通訳のポジションにつくための第1条件になっていることは確かなのです。

 

ところが、本来、欧米での通訳教育では、言語学習と通訳技能の習得は別物として扱つかわれ、2つをきっちり区別しています。前回書きましたが、欧米の主要な大学・大学院の通訳課程に入るには、英語なら母国語並みに駆使できることが前提になって場合がほとんどです。

 

A言語:母国語レベルで通訳できる言語

B言語:習得言語として通訳できる言語

C言語:聴いて通訳できる言語

 

と3つに分かれていて、B 言語が英語である場合、「話す・聴く・書く・読む」能力は大学教育を受けた母語話者と同じレベルである必要があります。「英語が上手に話せる」といったレベルを遥かに超えています。

 

通訳といえば、とかく「話す・聴く」だけを考えがちですが、4技能のバランスがうまく取れていない人は、通訳を続けていき、上達をめざせば、限界を感じることになります。

 

私のスクールのレッスンでは、レベルに応じて、受講者にある程度内容のある発話を聞かせ、聴いた発話内容の「要約」を英語で文章にしてもらいます。すると、長年、派遣等で企業通訳をしている人の書いた英語の要約文の中に、文法ミスが、それも稚拙なミスが、かなり見つかることがあります。

 

多くの場合、通訳者の扱う英語というのは、どちらかと言えば、フォーマルな英語が多く、書き言葉に近い英語を使用するケースが少なくないのです。

 

通訳者という立場の人が、幼稚な文法ミスを犯せば、聞き手の失笑を招いても不思議ではありません。信用もなくすことになるでしょう。

 

英語ネイティブふうの発音で、早口でペラペラと英語を話せば、素人耳には流暢で上手な英語に聞こえます。

 

しかし、通訳者の使命である「正確な情報伝達」という大事な点では詐欺を働いているのに近い、と私は思っています。

 

自分のミスに気づいていない人はともかく、確信犯である場合は、その人の良心は痛まないのだろうか、といぶかってしまいます。

 

通訳という作業は、情報を聴いて、理解し、整理して、相手に正確に伝達することです。そのためには、「要約」という練習は大変効果があります。ぜひ、やってみてください。その際に、

 

1) 聴く段階で時々、英語ネイティブの英語が聴き取れないことがある。

2) 聴いても内容がよく理解できないことがある。

3) 内容を整理できないことがある。

4) 内容を正確に伝達できないことがある

 

という問題が起こることがあるかもしれません。問題の原因を簡潔に指摘すれば、

 

1) は英語学習の問題で、生の英語を集中して「聴く」練習が不足している。

2) は知識・教養が不足している。

3) は論理力 (因果関係等を論理的に推論する力) が不足している。

4) は表現力が不足している。

 

ということになり、解決するには不足している「栄養素」を補う訓練をしない限り、問題は解決しません。

 

「伸び悩み」という問題に対処するには、「原点に戻る」べきなのです。英語で言えば、When you flounder around, you should try to go back to the beginning. となります。

 

初めに戻りましょう。

 

2つの要約問題を用意しました。実際のレッスンで使用した問題です。

 

  • 内容を把握できる知識があるかどうか。
  • メモ取り能力があるかどうか。
  • 文章による伝達能力があるかどうか。

 

という3点を確認することができます。

 

企業で通訳していると、どうしても通訳する内容に偏りができます。自分の狭い comfort zone (快適帯) のようなものが発生します。そういうことが、通訳技能の向上をめざす際に、「伸び悩み」が起こる原因になるのです

 

問題:音声リンクをクリックして、ナレーションを聴いて、英語に要約してみてください。何度かナレーションを聴きながらメモを取り、メモを参考にしながら要約するが理想です。要約する際は自分の意見を入れず、かつ原語の引き写しではなく、自分の言葉 (英語) を使ってください。

 

1) 初級レベル 60-80語程度の英語で要約文を書いてください。

Audio Link

https://drive.google.com/file/d/1__RU4dfmtWsN07oc9_JQOa1zGTOUf0hc/view?usp=sharing

 

2) 中級レベル  300 語程度の英語で “I”を主語にして要約文を書いてください。

Audio Link

https://drive.google.com/file/d/1mqUbiEyimGbgBBFG6dVaDRmkKsYZhEdg/view?usp=sharing

 

 

次回は、要約についてもう少し詳しく解説します。(つづく)

 

 

「悩める」企業通訳者のための通訳レッスン Lesson 1

 

 

筆者 (Jay Hirota) の通訳演習授業 使用言語は英語と日本語

 

 

 

 

 

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